プレゼント

ベッドの上に寝転んで、諌早はじっと手帳を見つめている。
６月２０日に、３人の名前とケーキの絵が描かれている。

「昨日は、敬介先輩と秋都先輩と秋良先輩の誕生日・・・」


ごろりと寝がえりを打つ。
３人の先輩の顔が、天井に映った気がした。


「また、何もプレゼントできなかった・・・」


自分の誕生日にはいつも素敵なものをもらうのに。
今回も、前回も、前々回も、先輩たちの誕生日に自分はプレゼントらしいものを何一つ贈っていない。


「あたし、あげたことなくね・・・？」


貰うばかりで、あげない自分。


「マジ、サイテー」


枕に顔をうずめる。
貰いものにはお返しを、贈り物には贈り物を、それが基本であり常識だと、諌早は信じていた。
贈り物だってタダじゃぁない。これでは、自分ばかり得をして、先輩たちは損しているだけでは。


「うー・・・・・・」


なんとかせねば。いつもそう思って、それで終わり。
ごろごろとベッドの上を転げまわる。
しばらく転がって、突然ぴたりと動きを止めた。



「・・・・・クリスマスと、バレンタイン」



絞り出すような声で呟き、諌早は何かを決意したように立ち上がると、机の上の貯金箱に手を伸ばすのだった。