６年前、運命の出会い

真冬。ちらちらと、今年最初の雪が舞っていた。
そんな中、１人の子供が道端にしゃがみこんで何かを覗いている。
目が覚めるようなオレンジの髪がやたら印象的だ。
眉間にしわが寄るほど見つめるダンボールの中には、そもそしている白い毛玉。

「なんだこれぇ？にゃんこ？」


真っ白な息を吐きながら、毛玉をつつく。
動くたびにカタカタと音をたてる赤いランドセルから、この子が女の子であることがわかる。


「もきゅーーっ！！」
「うわっ！！」


しつこい程つついていると、、毛玉がぴょーん！と飛び出してきた。
驚いて、少女は尻もちをつく。


「もきゅーっ！もきゅもきゅっ、きゅー！！」
「・・・・・・なに・・・・これ・・・・・」


空中にふわふわと浮かんだまま、毛玉が何か話しかけてきた。
どうやら怒っているようだ。短い手をパタパタさせて、怒りを伝えようとしている。
少女はなんとかその言葉の意味を理解しようと、毛玉の声に耳を傾けた。


「・・・・もしかして、昼寝のジャマしちゃった？」
「きゅいっ！」


どうやら正解だったらしい。
毛玉は「そうだよ、まったく！」とでも言うかのように踏ん反りかえっている。


「でもさぁ、こんなとこで寝てたらカゼひくぞー？」


言いながら立ち上がると、自分がしていた黒いマフラーを外し、毛玉に巻いてやる。
毛玉はちょっと重そうな素振りを見せたが、それが温かいことに気付いたのか、上機嫌で鳴いている。


「・・・・・・あ、そうだ！」
「きゅ？」


何かを思いついたように、少女が手を叩く。
手袋をしているため、ぽふっとまふけな音がした。


「お前、家に来いよ！そしたらあったかい布団で好きなだけ寝れるぜ？それから、飯と風呂もテーキョーしてやる！」
「・・・・・・・・」


毛玉は考えるように目を閉じて腕を組んだ。
そして目を開けると、右手をパッとあげた。


「きゅいっ」
「マジで！？やったぁ！じゃぁ、さっそく家に帰っていっしょに風呂入ろう！」
「・・・・・・・」
「あはは、んな嫌そうな顔すんなよ～！あ、おれ諌早！これからよろしくな！」
「もきゅっ！」


少女は毛玉を抱きしめると、そのまま家へ向かって走り出した。
その後、少女は毛玉の真っ白でほこほこした様子から、「白米」と名前をつけるのだった。